女に生まれたかった
昼のうちに掃除をすませ
皿を洗い夕げをつくり
洗濯物を取り込んで
あの人の帰りを待つ
ベッドではたくさん愛してあげるの
綺麗な身体で
疲れた今日一日を
私が慰めてあげるの
誰かの愛人になりたい
売春婦もいい
真っ赤なドレスを着て
シャネルの香水をつける
私はいるだけで
私を必要とする
身体があるだけで
私は必要される
絶望的なほど
人の目が欲しい
燃え上がるビロードよう
火がつくように欲望して
貴方のお好きなままに
泡のあふれたバスタブで
震える指先で月を蹴る
好きなだけ楽しんだら
捨てるように帰って
私は思った
私は何も欲しくない
みんなが私を欲しがれば
私は何も欲しくない
愛なんて知らない
貴方なんて知らない
私しかいらない
蟻のように働く時間があったら
蝶のように化粧をしていたい
蟻に食べられてしまうために
私なんて何百の蟻に
黒々とした鉄のようにたかられて
もがれ、焼かれて
いなくなってしまえばいいのに