2009年1月22日木曜日

死ねないルーシー

私はアンドロイド。

23世紀のロシアで踊り子を務めている。

私は月に一度のメンテナンスで半永久的に稼動することが出来る。

死ぬことはない。眠ることもない。

その代償として、自分が本当に起きているのか、生きているのかもよくわからない。

もっとも、ロボットが生きているかどうかを気にするなんて妙な話だ。




それでも愛する人はいる。

劇場の下働きの老人、イワンだ。

イワンは月に一度、満月の夜、私を裸にしてメンテナンスをする。

油圧を下げ、しわだらけの手で、シリコンからにじんだオイルを丁寧に拭く。


もうこんなことがかれこれ8年も続いている。




私に見える世界は、現実と幻がごちゃごちゃだ。

眠らないアンドロイドは起きながらにして夢を見るからだ。



時折、イワンと踊る幻を見る。

どうしてこんな夢をみるのだろう。



ポールに映る自分の姿はひどく歪んでいる。








劇場は、床も天井も全てが鏡ばり。

無限の私が、じっと私を見つめて、私の目を回す。

もう何が過去で、何が今なのかもわからなくなった。



ふと気づくと、イワンが身体を拭いている。

真っ白のつきひかりが、鉄格子の窓から差し込んでいる。


そうしてまた気を失った。